「プログラマーになれば人生が変わる」そう思って勉強している人は多い。だが、現実には8割以上が今の仕事に満足していない。待遇も環境も悪くないのに、なぜこれほど不満が多いのか。夢を持つ前に、一度立ち止まってこの現実を見てほしい。
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プログラマーは好待遇でも満たされない
Stack Overflowの2024年調査によると、プロのプログラマーの約80%が仕事に不満を感じている。1/3は「明確に嫌い」と答え、1/2は「仕方なく続けている」と答えた。
平均以上の給与、リモートワーク、自由な社風があるにもかかわらず、満足度が極端に低い。この矛盾の原因は「見た目の条件の良さ」と「実際の中身の重さ」が一致していない点にある。
高収入に見えるが、使用言語によって格差がある。PHPなど人気言語でも年収中央値は約49,000ドルに下がっており、「稼げる」というイメージと実際の所得の差が不満につながっている。
技術的負債は仕事のやる気を奪う
技術的負債とは、古くて手を加えにくいコードや設計のこと。汚れた積み木を壊さず、ずっと上に積み続けるような状態が続く。どこかを直すとどこかが壊れ、担当者はすでに退職済み。何も変えられないまま、時間だけが過ぎていく。
この状態は、自分の仕事に意味を感じにくくなる最大の要因になる。改善しようとしても環境やルールの壁が厚く、結果として「手を動かすだけの毎日」になる。
たとえるなら、家が傾いているのに、誰も修理せずに家具だけ増やし続けているようなもの。土台が歪んでいるのに、それを無視して積み上げても何も良くならない。
プログラマーのストレスは組織構造にある
上司からのプレッシャー、無限の会議、矛盾した要求。エンジニアは「コードを書く人」ではなく、「指示に従って形にする人」になりやすい。
GoogleやMetaの元エンジニアも、SNSやインタビューで「自分の意見が通らない」「会議のための会議が多すぎる」と発信している。形だけの自由と、実態としての束縛のギャップが、精神的な摩耗を生む。
プロダクトに価値があるかどうかではなく、「納期に間に合わせること」ばかりが評価される職場も多い。これでは達成感も自己効力感も得られない。
プログラマーのキャリアは短命になりやすい
20代後半で転職を繰り返し、30代にはマネジメントへ。技術職としての寿命が短いのも不満の一因。数年ごとに職場を変える人が多く、安定感に欠けるキャリア設計になりがち。
米国ではソフトウェアエンジニアの離職率が高く、「高収入=高満足」ではない現実が浮き彫りになっている。
健康面でもリスクが高い
長時間座って作業することで、身体的リスクも高まる。医学的にも、一日中座る生活は喫煙より健康に悪いとされている。精神面でも、運動不足はうつ傾向を加速させる原因になりうる。
Googleのような大企業が社内にジムやボールプールを設けるのは、こうしたリスクを軽減するための対策でもある。
まとめ
プログラマーの現実は、思っているよりも複雑で過酷な側面が多い。好待遇に見えても、その裏にある構造や文化は、満足感を阻む要因に満ちている。
ただ、それを知っていることが強みになる。構造的な不満を知ったうえで、どの道を進むかを選べる人ほど、長く穏やかに働ける。
現実はきびしいが、だからこそ判断力と選択肢が生まれる。理想だけを見て走るより、地に足のついた選択のほうが、結果的に遠くまで進める。