学習

勉強したいけど何を学べばいいのか分からない人へ:ITの入口、教えます

「何か作れたらいいのに」とふと思う瞬間がある。だが、その直後に「自分には無理かもしれない」と思い直し、結局何も手をつけないまま時間だけが過ぎていく。もし今、その気持ちを放置し続けたら、いずれ“何かを始める力”そのものを失ってしまうかもしれない。

「何を学ぶべきか分からない」は、実は最強の出発点

「何から始めればいいのかわからない」と言う人ほど、実は大きなアドバンテージを持っている。なぜなら、自分の中にすでに「やりたい」が存在しているからだ。

スタンフォード大学の学習研究によれば、目的意識よりも好奇心の方が学びを持続させる動機として強力に働くという結果が出ている。つまり、「便利なアプリを作ってみたい」「こんなサービスがあったら面白い」——このような好奇心が、技術の習得を加速させる最大のエンジンになる。

学習とは、本来“足りない知識を埋める作業”ではなく、“知りたいことを知っていく旅”であるべきだ。

AIは“勉強をスキップする近道”ではなく、“思考を広げる相棒”

AIだけで学ぶという話をすると、「それだと本格的な知識が身につかないのではないか?」と不安に感じる人もいるだろう。

確かに、AIはすべてを正しく教えてくれる万能の教師ではない。しかし、それが目的ではない。

AIはすでに完成されたコードや考え方を提示し、それを分解して理解するという「リバースエンジニアリング」の起点になる。この手法は、実際の開発現場でも非常に有効である。製品を分解して仕組みを知るように、動くコードを分解し、変更し、再構築していく中で自然と知識が定着していく。

実際にカーネギーメロン大学の研究でも、「既存のコードを修正・改良するプロセスが、基礎から学ぶよりも効率的にスキルを習得できるケースがある」と報告されている。

学びとは、知識を頭に詰め込むことではない。動いているものを観察し、手を加えてみること。そこにこそ“実感”がある。

PCのスペックで悩むのはもうやめよう:Windows11が動けば十分

自分のPCが対応しているか不安に思う人もいるかもしれない。しかし結論から言えば、Windows11が動いていれば、ITの学びに必要なことはすべて実行できる

必要なのは、以下の3つだけだ。

  • Google Chromeなどのモダンブラウザ
  • テキストエディタ(メモ帳でもVisual Studio Codeでも可)
  • 安定したインターネット環境

GPUの性能やメモリの容量に頭を悩ませるよりも、手元にある環境でまず動かしてみることのほうが圧倒的に重要である。

3ステップで始める“実験としてのIT”

本を開く必要はない。動画を見る必要もない。まずは、以下の3つを順番に試してみることから始めてほしい。

  1. AIに聞いてみる
    例:「ボタンを押すと今日のひとことが表示されるアプリを作ってみたい」と入力する。
    ChatGPTや他の生成AIは、即座にコードを生成してくれる。
  2. 生成されたコードをコピー&ペーストして動かしてみる
    .html ファイルを作成して、コードを貼り付ける。ブラウザで開くと動作する。
  3. 少しずつ改造してみる
    「文字の色を変えたい」「ボタンの位置を変えたい」など、やりたいことをそのままAIに伝える。修正案がすぐに返ってくる。

この流れを通して得られるのは、“理解”ではなく“感覚”だ。感覚から入る学習こそが、長期的な習得を可能にする。

最初に作るアプリは“くだらなくていい”

最初から意味のあるものを作る必要はない。たとえば「ボタンを押したら『おはよう』と出る」だけでもいい。むしろ、それくらいのシンプルさがちょうどいい。

なぜなら、最初に必要なのは“動いた”という手応えだけだからだ。

マギル大学の研究によると、**「小さな成功体験が脳の報酬系を刺激し、その後の学習行動を習慣化させる」**ことがわかっている。つまらないように見える成果こそが、次のステップへのモチベーションになる。

このまま何も始めなければ、“始める力”が腐っていく

「やってみようかな」「でもちょっと不安だな」「まあ、また今度にしよう」

こうした思考が繰り返されるうちに、人は自分の中の“動き出す力”そのものを失っていく

そして気づけば、何を見ても「自分には関係ない」と無意識に距離を取るようになる。新しいものにワクワクしなくなり、失敗を恐れすぎて挑戦できなくなる。そうなってしまったら、どんなに優秀なツールや学習法が目の前にあっても、手が伸びることはない。

未来が怖いのではない。“動けない自分に慣れてしまうこと”が一番怖いのだ。

まとめ

今の時代、ITを学ぶのに特別な環境も特別な努力もいらない。ただ、「これやってみたい」と思った瞬間に、AIにそれを聞いてみる勇気があればいい。

AIは、答えを与えるための存在ではなく、あなたが考え、試し、発見するプロセスを支える“反射板”のような存在だ。

動くコードを見て、それをいじって、少しずつ自分のものにしていく。この試行錯誤こそが“実感ある学び”の本質であり、そこにしか「自分でもできた」という感動は生まれない。

もう一度言う。あなたの手元にあるPCと、わずかな好奇心、それだけで十分だ。

あとは、たったひとつ。「今やってみる」こと。それだけが、現実を変える力を持っている。