Power Platform

コーディングじゃダメなんですか? ──Power Platformの価値を語れない人がハマる落とし穴

Power Platformのスキルを身につけても、「クライアントにその価値をうまく伝えられない」と感じていないだろうか?
とくにエンジニア出身の人ほど、「コードで書いた方が早くないですか?」という問いに詰まることがある。
ローコードは手軽。だが、それだけでは説得力にならない。

この記事では、なぜPower Platformを選ぶべきなのか?
そして、コーディングと何が違うのか?
その違いと価値を、クライアントにも伝わる言葉で言語化していく。

なぜ今、ローコード/ノーコードなのか?

まず大前提として、なぜ今、ローコード/ノーコードが注目されているのか。
それは、企業のIT開発が、次のようなジレンマに陥っているからだ。

  • 開発スピードが追いつかない(DXをやりたいのに半年待ち)
  • IT部門と業務部門の間に深い溝がある
  • 人が足りない。特にエンジニアが足りない

つまり今、求められているのは「プロが時間をかけて最高のソリューションを作る」ことではない。

「現場の人間が、自分たちの手で“まあまあ良い”仕組みを即座に作れる」こと

それを可能にするのが、Power Platformだ。

Power Platformは「1人Scrum」である

コーディングとPower Platformの違いを端的に言うなら、こうなる。

  • コーディングは「0→1の自由度」はあるが、「時間・リソースコスト」が高い
  • Power Platformは「80点のソリューションを、最短最小コストで作る」ためのもの

たとえばアジャイル開発。
コーディングでは、要件定義→設計→開発→テストを回しながらプロダクトを作る。

Power Platformはその流れをひとりで完結できる。
言うなれば「超アジャイル」、あるいは「1人Scrum」だ。

しかも、ExcelやTeamsと連携できるため、現場の業務にそのまま“接続”できる。
Power Appsで画面を作り、Power Automateでワークフローを自動化、Power BIで可視化する。
業務改善が、ITエンジニア抜きで回せる。これが最大の強みだ。

それでも「コードの方が自由じゃないですか?」と聞かれたら

たしかにそうだ。
コーディングの方が自由度は高い。何でもできる。
複雑なUI、複数システムとの連携、高度な演算ロジック――Power Platformでは対応しきれない領域もある。

だが、それを言うならこう答えたい。

「何でもできる」ことが必要なケースは、実は全体の1〜2割しかない
残りの8割は、「すぐ動くものが欲しい」だけだ

比較軸Power Platformコーディング(フルスクラッチ)
開発スピード最短数日〜最短数週間〜
保守性GUIベースで容易コード変更には開発者が必要
利用者参加業務部門でも操作可能IT部門が前提
ガバナンスMicrosoft環境で統制しやすいツール・運用がバラバラになりやすい
拡張性Dataverse・Azure連携で可自由に実装可能

「ツールが使える」だけではコンサルになれない

ここで忘れてはいけないのが、Power Platformコンサルの本質だ。

Power Platformは誰でも使える。
だが、「どこで使うべきか」「どう設計すれば業務が回るのか」まで含めて考えられる人は少ない。

求められているのは、

Power Platformというツールを通じて、業務課題を構造的に解決できる人間
現場の言葉と、ITの言葉を翻訳できる人間

それが、Power Platformコンサルタントの役割だ。

「選ばれる人」になるために、語れるようになっておきたい3つのこと

以下の3点は、最低限答えられるようにしておきたい。

① なぜ今ローコードなのか?

→ 開発スピードと人材不足への現実的な解決策だから

② なぜPower Platformなのか?

→ Microsoft 365との統合性、現場で完結する操作性、ガバナンス設計まで含めた全体最適ができるから

③ コーディングとどう使い分けるのか?

→ 複雑な要件・UI・統合が必要ならコーディング
→ そうでなければPower Platformがベター
→ 要件とリソースに応じて戦略的に選ぶことが「語れる」状態

結論:Power Platformは「最短の成功体験」を提供するための武器

クライアントが求めているのは、今すぐ使える答えだ。

Power Platformは「ローコードで簡単にアプリが作れます」ではない。
「成功体験を即座に生み出せる構造」そのものだ。

そのためには、「なぜこのツールを使うのか」「どこに効果が出るのか」を、技術者目線ではなく業務目線で語れる力が必要になる。

Power Platformを「操作する人」ではなく、「語れる人」になる。
それが、コンサルタントとして信頼され、選ばれるための第一歩だ。