エンジニアにはなれない。でもITで生き残りたいなら「市民開発者」になれ

プログラミングに挫折した。IT資格もない。数学も苦手。そんなあなたがIT業界で生き残る方法はある。技術で勝てないなら、別の武器で戦えばいい。市民開発者という道が、いま注目を集めている。

Contents

「エンジニアにはなれない」は敗北ではない、判断力の証明だ

多くの人がIT業界に憧れる理由は明確。高収入、将来性、スキルの武器化。しかし現実は厳しい。プログラミング学習サービス「Progate」のデータによると、7割以上が初級コースで挫折している。

学ばなければ未来がない、という幻想に縛られる人は多い。ただ、あきらめた人すべてが脱落者ではない。むしろ、向かない道から身を引ける人間こそが、次のキャリアを築く余地を持つ。

プログラマーにはなれなくても、IT業界で生き残る職種は数多く存在する。市民開発者は、その中でも未経験者に開かれた選択肢となっている。

エンジニアだけがITを支えているわけではない。たとえばプロジェクトマネージャー、デザイナー、QA、業務改善担当。複雑化したIT現場では、専門家よりも現場をつなぐ“翻訳者”が重宝される。

市民開発者は、その橋渡し役となる。業務の悩みを聞き取り、ノーコードツールでアプリを作成する。エクセル職人の進化形ともいえる。

Forresterは「市民開発者の存在が企業のDXを成功させる鍵になる」と指摘している。技術よりも、理解力と調整力が問われるポジションである。

市民開発者とは、主にノーコード・ローコードツールを活用して業務システムやアプリを開発する非エンジニアのこと。キーボードではなく、画面を操作して業務を効率化していく。

よく使われるツールには以下がある。

市民開発者の価値は「作ること」ではなく「改善すること」。業務のどこが無駄かを見抜き、それをツールで変える。手段ではなく、成果で評価される職種といえる。

Power PlatformはMicrosoftが提供するノーコード開発ツール群。ExcelのようなUIで、アプリや自動化フローを作成できる。Power Apps、Power Automate、Power BIが主な構成要素。

なぜPower Platformが推奨されるのか。その理由は3つ。

まるで電車の中で駅弁を食べるように、既存の環境に“持ち込める便利さ”がある。新しいITツールではなく、すでに社内にある資産を活かせるという意味で、圧倒的な即効性を持つ。

市民開発者として評価されるポイントは明確。自動化によって1日1時間でも業務が減れば、その人の価値は跳ね上がる。

以下のような施策が代表的な成果として挙げられる。

たとえば、毎朝の在庫確認メールを自動で送るだけでも、業務時間が圧縮される。その工夫ひとつで“ただの事務員”から“現場を変える人”に変わる。

Gartnerは2023年の市場予測で「ローコードとAIの統合が今後10年の企業競争力を決める」と言及。MicrosoftのCopilot機能も、ノーコードユーザーに向けたAI活用を想定している。

Power Platformでは、AI Builderと連携して帳票の読み取り、チャットボットの構築なども可能になっている。市民開発者がAIを使いこなす時代がすぐそこにある。

この進化は、専門職ではなく“変化に乗れる人”を評価する時代の始まりを意味する。

エンジニアになれないと気づいた瞬間に、別の勝ち筋が開ける。市民開発者は、コードの壁に阻まれた人々がIT業界で生き残るための、現実的で合理的な選択肢である。

Power Platformのような身近なツールを使いこなすことで、あなたは職場の“業務改善屋”になれる。必要とされるのは、センスでも才能でもない。現場をよく見る目と、効率を追求する気持ち。それがあるなら、ITで戦える。

“なれないもの”に固執せず、“なれるもの”を極めれば、それだけでキャリアは安定する。市民開発者という立場は、静かに、でも確実にその可能性を証明しつつある。