働き方

「年収1000万より、月収10万円を5つ」──“分散型キャリア”がこれからの常識になる理由

「もっと自由に働きたい」「会社だけに縛られたくない」
そんな気持ちを持ちながらも、年収や肩書きに縛られていることに気づいていない。
ひとつの大きな収入より、小さな複数の収入のほうが強い時代が来ている。
それは負け組の選択肢ではなく、情報強者の選択肢だ

収入は“額”ではなく“源”で見る時代に変わった

2023年、アメリカのコンサルティング企業 McKinsey が発表した調査によると、
「メインの仕事以外に副収入を持つ人の割合」は、全体の36%に達している
この層の大半は、年収が高い人ではなく、生活コストと将来の安定を天秤にかけた人たちだった。

かつては年収がすべての指標だった。
だが今は、収入の「持続性」「分散性」「柔軟性」のほうが重視されている。

「1つの高収入」は、もはやリスクそのもの

高収入の仕事には、往々にして以下の構造がある:

  • 高いスキル要求と重い責任
  • 時間的拘束と常時稼働のプレッシャー
  • 会社やクライアントに依存した立場

ひとつの糸が切れたら、全体が崩れる仕組み。
これはまるで、高層ビルのてっぺんに1人だけ住んでいる構造。風が吹けば終わる。

「低収入を複数持つ」のは、みじめでもなんでもない

月収10万円が5つ。
たとえば:

  • 技術ブログの広告収入
  • スキルシェアのコーチング
  • ローカルプロジェクトの請負
  • YouTubeの小規模チャンネル
  • 海外DAOの一部貢献

これらを組み合わせたら、ひとつひとつの収入は大きくなくても、相互に補完しあうネットワークができる
大きな1本の柱より、5本の竹ひごを束ねた方がしなやかで折れにくい

プライドが「自由」の邪魔をする構造

「フリーランスなら月収100万でしょ」
「副業なんて所詮お小遣い」
「小さな案件ばかりやるのはかっこ悪い」

こうした思い込みは、大きな企業やメディアが作った“勝ち組”の定義に引きずられているだけ。
その定義がもはや時代遅れであることに、気づいていない。

たとえばDAOで報酬を得ている人は、最初は月数千円から始めている。
だがその貢献はGitHubやコミュニティ上で可視化され、信頼として残る
それは「次の案件の切符」になる
これは、単なるアルバイトではない。信用経済のポートフォリオ作りだ。

経済構造がすでに「分散」を求めている

LinkedInの2024年レポートでは、職歴の多様性を持つ人の転職成功率が上昇傾向にあると報告されている。
これは裏を返せば、「1社で働き続けてきた人材」はリスクに見なされはじめているという事実。

メルカリ元CIOの石黒卓弥氏も、インタビューでこう語っている。

「職種が“専門職×流動型”になる時代、キャリアは『職能』より『稼ぎ方』で差がつく」
(出典:NewsPicks『これからのキャリア論』2023)

「月収10万を5つ」は“逃げ”ではなく“設計”

この構造に切り替えるには、精神的な「見栄」との決別が必要。
だが裏を返せば、見栄さえ手放せば、収入は分散できるし、自由時間も取り戻せる

分散のメリットは3つに集約される:

  • 1つが止まっても全体は維持できる
  • タスクも働く時間も、自分で組み立てやすい
  • 業務の幅が広がり、結果として経験値が蓄積されやすい

これは小さく稼ぐことを繰り返すことで、大きな信頼と自立を獲得するルートでもある。

まとめ

「年収1000万円」は、もはや働き方の理想ではない。
1つの収入源にすがる構造そのものが、過去の遺物になりつつある

求められるのは、安定より変動を設計できる力
その第一歩が、プライドを手放すこと。

月収10万円を5つ作ることは、カッコ悪い選択ではなく、しなやかに生き抜く戦略だ。
不安定に見えるものを、自らコントロールするために。