AI

もうコードはいらない?AI時代に求められる本当の力

「プログラミングって必要なのかな?」
その疑問、あながち間違っていない。
AIの進化で、技術の“使い手”と“作り手”の境界は消えかけている。
専門知識がなくてもAIを使いこなせる時代に、何を学ぶべきか。
現場の声と最新の視点をもとに、これから必要とされる“本当の力”を解き明かす。

コードが主役の時代は終わったのか?

NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアンが語った。
「これからの時代、誰もがプログラマーになる。ただしコードは書かない」

彼の発言が指すのは、人間の言葉を理解するAIが社会に浸透したという事実。
プログラミングの必要性が消えるのではなく、プログラムの形が変わった
命令文ではなく、意図を伝えること。
その手段がコードから言葉へと変わってきている。

たとえばMicrosoftのCopilotでは、簡単な言葉で命令を与えるだけで
アプリが文脈を補完し、背景のデータを組み込み、業務に必要な出力を返してくる。
この過程でコードは影に隠れ、人間の操作は言語化だけで済むようになる。

それでも消えないプログラミングの価値

OpenAIのサム・アルトマンは「ソフトウェアの価値は変わらない」と述べた。
単に言語を覚えることではなく、“コンピュータに考えさせる”ことの理解が問われる
なぜなら、AIに正しく命令するには、その裏にある構造を知る必要があるから。

・複雑な命令の組み立て
・AIの出力が“正しいかどうか”の見極め
・想定外の挙動に対する制御

これらを可能にするのが、コンピュータサイエンス的な思考力。
コードを書く力ではなく、コードを読む力が問われるようになる。

AI時代の新スキル「プロンプトエンジニアリング」

命令の書き方ひとつで、AIの出力は劇的に変わる。
このスキルを「プロンプトエンジニアリング」と呼ぶ。

  • 意図を明確に言語化する
  • 必要な背景情報を埋め込む
  • 出力の形式を具体的に定める
  • 制限や条件を事前に与える

これらはプログラミングではなく、対話の設計に近い。
たとえば、「PDFの中から要点を抜き出して、3段階の理解レベルでまとめて」とAIに伝えると
初心者・中級者・専門家向けに分けた説明が返ってくる。

AIは万能ではないが、賢く使えば“代わりに考えてくれる”存在になる
その鍵を握るのが、プロンプトの質。

ドメイン知識×AI活用=無限の可能性

AIを活用する上で、もうひとつ不可欠なのが「専門性」。
業界知識や現場の感覚がなければ、AIを正しく導くことができない。

例:

  • 教育なら「どの年齢層に、どんな言葉で伝えるか」
  • 医療なら「症例の背景を踏まえた診断サポート」
  • 製造業なら「設計図やマニュアルに適した出力形式」

つまり、AIは魔法の杖ではなく、増幅器
自分の知識や経験を拡張してくれる存在。
だからこそ、AIが得意な領域はAIに任せ、自分は意味づけと判断に集中すべき。

たとえ話:自転車ではなく“電動自転車”に乗る感覚

AIは、ただの道具ではない。
むしろ、電動アシスト付き自転車のような存在
自分の力だけでは登れない坂道も、AIの力を借りればスイスイ進める。
ただし、どこに行くか、どう曲がるかの判断は自分次第。
方向音痴のまま乗れば、どこかに衝突するだけ。

これから学ぶべきは「デジタルバイオロジー」のような交差点

フアンは「生命科学がこれからの工学になる」と断言した。
デジタル技術とバイオ領域が融合し、
発見の時代から設計の時代へと移り変わっている

それは製薬だけでなく、環境、農業、素材開発にも波及する。
すでにAIは、タンパク質の構造を予測し、最適な分子を設計する領域に入っている。
ここでも求められるのは、専門性とAIを組み合わせる力。
まさに**「AIで何を作るか」が問われる時代**。

まとめ

コードを書く力は、AIによって一部の人にとっては不要になる。
しかし、「何を作るか」「どう使うか」「どう導くか」は、依然として人の役割に残る。
AIは万能の答えではなく、問いの質によって性能が変わるパートナー
求められるのは、AIに仕事をさせる“頭脳”を持つこと。
そのスタートラインは今。
遅れれば、1年後には大きな差になっている。