BPO

【育てる気ゼロ】BPOという“使い捨て”システムが、キャリアを潰すまで

「何もできないまま年を取る気がする」
そんな予感が頭をよぎる瞬間はある。だけどあなたは、気づかないふりをする。
今日も忙しく業務をこなす。誰かに呼ばれる。案件のキックオフがある。資料の更新がある。
次の瞬間には、その予感はかき消される。

でも本当は、知っている。
今の仕事は、自分の未来に何ひとつ積みあがっていない
そう思うことさえ、「甘え」や「逃げ」にすり替えて、日常に押し込めているだけ。

肩書が増えるほど、空っぽになるキャリア

BPO業界には「プロセスコンサルタント」「業務改善PM」「クライアントサービス統括」など、一見“すごそうな肩書”があふれている。だがその中身の多くは、顧客企業の環境や体制に依存した業務の代行にすぎない。

東北大学が2022年に行った「非正規雇用におけるスキル継承可能性の研究」では、「業務委託型雇用では、業務設計力や構想力が学習されにくい」という調査結果が示されている。
スキルは移転しない。裁量は持てない。ツールも仕様も、すべて顧客任せ。

何かが増えているようで、実は“誰かの成果物の下請け”として自分が最適化されていくだけ
その肩書は、自分のキャリアを飾るためではなく、他人の論理に従うためにある。

「自分では何も決められない人間」に仕上がる仕組み

BPO業務の多くは、標準化と再現性を重視する。だからこそ評価される。
だが、標準化された働き方は、「考えない」「決めない」「動かさない」を徹底する。
やがてあなたは、自分の言葉で意思決定ができない人間になる。

筑波大学の人間総合科学研究群の報告によると、「裁量のない職場環境に長期的に従事した労働者は、意思決定能力と自己効力感の低下を報告する割合が顕著に高い」とされている。
成長ではない。消耗の末路でしかない。

「年収は上がっている」──そう言って安心しているあなたへ

年収が増える。評価も悪くない。クライアントから感謝された。
それで“もう十分”だと思おうとするあなたの心に、誰も踏み込まない。

それは、あなたが「外注されやすい人材」に成熟したからだ。
必要以上の野心もない。与えられた作業はきちんとこなす。空気も読める。文句も言わない。

その安定は、静かにあなたの思考と判断を止めていく。

あなたは気づいている。だが、気づいたと認めてしまうと、何かを変えなければならなくなる。
変えられない自分が嫌だから、先に“気づかない”を選んでしまう。

それでも、まだ言い訳は続く

「でも、今さら他の仕事なんてできない」
「だって、スキルがない」
「自分はプロジェクトに必要とされてるから」
「人間関係も悪くないし、居心地は悪くない」

そのどれもが本音だ。けれど、その本音の奥にあるのは、変化するのが怖いという感情そのものだ。
何も変わらないことに安堵しながら、同時に「こんな人生でいいのか」と怯えている。

その矛盾こそが、あなたを鈍らせ、立ち止まらせ、壊していく本体である。

株主のために“あなたの未来”はコストカットされている

BPO企業の経営構造を見てみる。
決まった人月単価。決まった契約。決まった更新サイクル。
「定常的に回る工場のような仕組み」こそが、投資家に最も好まれるビジネスモデルだ。

売上=人数×時間
利益=稼働率×人件費の抑制
評価=効率化×契約維持

キャリアを育てる?育てなくていい。
育ててしまうと、その人は辞めてしまうから。

大切なのは、「替えがきく人材」を均質にそろえること。
そうすれば、クライアントが変わっても、コストは一定に保たれる。
あなたのキャリアは、数字上“最適化”されている。
だからこそ、育てる気なんて最初からない。

キャリアのフリをした“都合のいい存在”にされていないか

あなたは今、肩書と年収で“キャリアがあるように”見せられているだけかもしれない。
決定権のない職場で、誰かのロジックに従いながら、働いている自分に違和感はないか?
あなたが動いているようで、実は「動かされている」日常が、静かに心を削っている。

このまま気づかないふりをして、10年が過ぎる。
技術の進化で業務の自動化が進み、今のポジションがなくなる。
何も積みあがっていない。どこにも通用しない。
そのとき、「あのときちゃんと考えればよかった」と呟いても、誰も助けてはくれない。

今はまだ遅くない。
焦燥感を、行動の起爆剤に変えられるのは、「気づいたとき」だけだ。
逃げたくなるその瞬間にこそ、自分のキャリアの真実が宿っている。