DNSの設定やWebアプリの構築で、ドメイン、ホスト、FQDNという言葉が登場する。そのたびに「どれがどこまでを指しているのか」があやふやになる。聞きなれた言葉のはずなのに、組み合わせると急に自信がなくなる。そんな混乱を一度で整理する。
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名前にまつわる混乱はなぜ起こるのか
ドメイン、ホスト、FQDNはいずれもインターネット上の「名前」に関わる用語。名前はそもそも人間のためにあるが、機械にとっても識別のために欠かせない。
これらの用語は日常的に目にするが、重なる領域が多く、定義があいまいに感じられやすい。
Google Cloudは次のように説明する。
"A fully qualified domain name (FQDN) includes a host name and a domain name."
FQDNが両方を含むことが、違いを理解しにくくしている理由のひとつ。
名前は何を含んでいるのか。どこまでがドメインで、どこからがホストなのか。それぞれの役割を明確にする必要がある。
ドメインとは何か:町の名前のようなもの
ドメインはインターネット上の住所。example.com のような形をとる。.com がトップレベルドメイン(TLD)、example がセカンドレベルドメイン(SLD)。
ドメインは階層構造で、右から左へ向かって広い範囲から狭い範囲へと進む。
.com
→ 商業系example.com
→ 個別の組織
ドメインは建物が並ぶ「町」に相当する。町名だけではどの家かわからないが、全体の地域を特定する手がかりになる。
ホスト名とは何か:家の名前のようなもの
ホスト名は、ドメイン内での特定の機器を指すラベル。www.example.com
における www
がそれにあたる。
ホスト名はサーバーやコンピュータごとに異なる。たとえばメール用には mail.example.com
、API用には api.example.com
という具合。
同じ町(ドメイン)の中で、家(ホスト)を区別するための名前。郵便番号だけでは家に届かないように、ドメインだけでは通信できない。
FQDNとは何か:地番まで書いたフル住所
FQDN(Fully Qualified Domain Name)は、ホスト名とドメイン名の両方を含む完全な名前。www.example.com.
のように表現され、末尾にドットが付くこともある。これはルートドメイン(.)を明示している。
FQDNは唯一無二の名前。DNSサーバーが名前をIPアドレスに変換する際、FQDNで指定することで正確な識別が可能になる。
Amazon Route53はこう定義している。
"FQDN uniquely identifies a resource on the internet. It includes all domain levels including the root."
インターネット上のリソースを一意に特定するには、FQDNが必要。
実際の使い分け:設定ファイルと通信の違いに現れる
それぞれの用語は、使用される場面で明確に区別される。
- DNSの
Aレコード
→ FQDNを指定 - hostsファイルの設定 → ホスト名のみで記述可能
- SSL証明書 → FQDN単位で発行
ホスト名は短縮形で使えるが、グローバルな通信ではFQDNが必須。特にSSL/TLSやAPI Gatewayの設定では、FQDNを明確に指定しないと動作しないことがある。
比喩で理解する:インターネットの住所
仮に「example.com」という町があるとする。
- ドメイン:町名(example.com)
- ホスト名:建物名(www、mail、api)
- FQDN:郵便番号+町名+建物名(www.example.com.)
郵便局が荷物を届けるとき、必要なのはFQDN。人間同士の会話では「駅前のコンビニ」と言えば通じるが、コンピュータにとっては不十分。あくまで明確な住所=FQDNが求められる。
URLとの違いも重要
FQDNとURLは混同されやすいが、別物。
- FQDN:
www.example.com
(名前) - URL:
https://www.example.com/index.html
(場所)
FQDNはあくまで「どこの誰か」。URLはその人の家の中の「どの部屋に何があるか」。プロトコルやパス情報を含むURLと、名前だけのFQDNを分けて考えることが重要。
実務でよくある混同パターン
example.com
をホスト名だと思い込むwww.example.com
をドメインだと誤解する- FQDNの末尾にピリオドがつく理由を知らない
これらは設定ミスの原因になりやすい。証明書のCN(Common Name)に example.com
と書いてしまうと www.example.com
に対しては無効になることがある。
まとめ
ドメインは「土地」、ホストは「建物」、FQDNは「正確な住所」。
名前の構造を分解して考えることで、ネットワーク設定やセキュリティ対応の精度が上がる。Webサービスがどの名前を必要としているかを意識するだけで、トラブルを未然に防げるようになる。名前の整理は、設計の見通しをよくするための第一歩。今より少しだけ自信を持って設定ファイルを開けるようになる。