気がつけば人の調整ばかりしている。伝わっていない、動いてくれない、意見がまとまらない。気づいたら自分の仕事は後回し。そうして疲れ果てていくのが「リーダー」という役割だった。
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管理職は「やりがい」より「限界」が先に来る
Gallup社の調査によると、マネージャーの約7割が「高ストレス状態」にあると回答している。これは非管理職の2倍以上の水準だ。ハーバード・ビジネス・レビューでも、「マネージャーは企業内でもっとも燃え尽きやすい職種」と指摘されている。
現場の不満と経営の期待の板挟み。評価も曖昧、裁量も不明確。誰よりも働いているのに、誰からも感謝されない。こうした構造は、単なる“ポジション”ではなく“消耗戦”として存在している。
リーダーは戦略家ではなく、調整屋に変わった。決める人ではなく、言われた通りに「まとめる人」に堕ちていく。
あなたの疲れは“誰かのために頑張りすぎた”代償
産業ストレス学会のデータによれば、職場のストレス要因の第一位は「人間関係」である。その中でも特に“中間層”の疲労が深刻だ。
精神科医トーマス・ホッペルは、「自己犠牲型の役割行動は、うつ傾向と強く相関する」と指摘している。優しく、真面目で、空気を読む。そんな「いい人」が、最初に壊れていく。
意見をまとめる。予定を合わせる。関係を壊さないように伝える。そうした調整作業は、正しく働けば働くほど、精神的エネルギーを削り取る。
Youtuberはなぜ長く続けられるのか──「ひとり型」の持続可能性
Youtuberやライブ配信者は、毎日コンテンツを更新している。過酷なように見えて、彼らは潰れにくい。
理由は単純。他人に振り回されない構造で仕事ができているからだ。
- 台本も撮影も編集も、自分で決める
- 打ち合わせゼロ
- 時間もスタイルもすべて自己裁量
この自己完結性が、精神的な余裕を生む。誰かに合わせるための気遣いがない。誰かを待つ必要も、評価を気にする必要もない。
職種は違っても、構造は応用できる。ひとりで設計し、進行し、完結する。そういう働き方が実際に“続く”理由がここにある。
チームプレイは誰かの精神を代償に回っている
チームでの協働には、摩擦が必ず発生する。心理学者ソロモン・アッシュの同調実験でも示されたように、集団は個人の判断を狂わせる。
- 多数決に引きずられる
- 空気を読んで意見を曲げる
- 明言しない人間に気を遣う
Googleが実施した「プロジェクト・アリストテレス」でも、チームの心理的安全性が高いと成果が出るとされたが、それは他者に気を配れる“強者”が揃っている場合に限る。
大多数の現場では、誰かが我慢して、誰かが折れて、誰かが限界を迎えている。その誰かが「まとめ役」になった人間である確率は高い。
ひとりでやるという選択は“逃げ”ではなく“戦略”
ミハイ・チクセントミハイは、著書『フロー体験』で「人は自分の裁量で行う仕事に最大の集中と満足を感じる」と述べている。
ひとりで進めるとは、逃げではない。設計の自由、判断の即時性、精神の自律性を得るという戦略的選択である。
- 目的に沿って自分で構造を決められる
- 他人の意見にブレず、自分の進行で動ける
- 達成と責任が一致するから、仕事の意味が明確になる
この“自己設計型の仕事”は、管理職のように人に尽くして評価されるスタイルとは対極にある。
まとめ
リーダーとは誰かの顔色を見て、他人の責任を引き受け、全体を回す存在だった。
だが、それは自分をすり減らす構造でもあった。責任だけが重く、裁量はなく、疲労だけが残る。
続けられる働き方に必要なのは、“ひとりで動ける構造”だ。
今の時代、誰かを導くよりも、自分を壊さず成果を出すほうが重要になっている。それは逃げではなく、持続可能な設計として選ばれはじめている。