ふだんの業務で感じる違和感。「これ、アプリで自動化できないの?」と思いながらも、コードを書く技術はない。でもツールはある。モデル駆動型アプリは、そんな悩みに応える新しい選択肢。ただ、名前が似ている“ドメイン駆動設計”とどう違うのか?その疑問を軸に、モデル駆動型アプリという言葉の正体をつかんでいく。
Contents
モデル駆動とは何か?まずはドメイン駆動との違いから
ドメイン駆動設計(DDD)は、業務の専門知識(ドメイン)を元に、ソフトウェアを精密に作り込むための設計思想。
- ビジネスのルールをエンジニアと共有し
- 専門用語を正しくコードに落とし込み
- 大規模で複雑な開発を正確に行うためのアプローチ
たとえば金融システムや医療業界などで、ルールが複雑すぎて、「コードに業務が正しく翻訳されないと破綻する」ような現場で使われる。
一方、モデル駆動型アプリ(Model-Driven App)はもっと実務的で、Microsoft Power Platformを使って業務の「構造」をアプリとしてすばやく表現するための方法。
- プログラミングせずに、データの種類と関係を定義し
- その構造から自動で画面や処理を組み立てる
- ユーザー自身がアプリを作れるようになる
たとえば、「営業案件ごとに担当者・売上・期日を管理したい」というニーズがあれば、フィールドと関係性を決めるだけで、その管理アプリが自動で出来上がる。
ドメイン駆動が“深く考える”なら、モデル駆動は“まず作る”
ここで重要なのは設計のアプローチ。
ドメイン駆動設計
→ 業務を分析し、モデルを定義し、クラス構造やアグリゲートで論理をまとめる。複雑な業務の“振る舞い”まで設計に落とす。
モデル駆動型アプリ
→ 扱う情報の“種類”と“関係”を定義し、フォーム・一覧・業務フローなどのUIが自動生成される。先に業務の枠を決め、あとは動かしながら作る。
たとえば、DDDはエンジンを設計する技術。
モデル駆動はエンジンのパーツを選んで組み立てる技術。
どちらが優れているかではない。目的と求められるスピードが違うだけ。
モデル駆動が向いているケースとは?
以下のようなケースでは、モデル駆動型アプリが極めて効果的になる。
- データ構造は明確で、UIはそれに従えばよい
- ワークフローが定型で、人によって変わらない
- セキュリティやアクセス制限が重要(役割別に見せ方を変える必要がある)
- 長期運用より、すぐに動くものが必要
これに対しDDDは、ユーザーの操作が自由で、判断や例外処理が多い業務を扱うときに強みを発揮する。
モデル駆動は“読める人”の技術である
Model-Driven Appを使うスキルとは、構築するスキルではなく、構造を読み解くスキル。
たとえば、以下のような能力が重視される:
- フィールド(項目)が意味するものを把握する力
- 関係性(リレーション)を設計できる力
- 業務の一連の流れを「画面遷移」として表現できる力
- ワークフロー(通知、承認など)を言語化できる力
このようなスキルは、エンジニアよりも業務に詳しい現場の担当者が持っていることが多い。だからこそ、**「現場の人がアプリを作る時代」**において、Model-Driven Appは武器になる。
もし、あなたがこの違いを理解しないまま進んだら?
考えてみてほしい。
目の前の業務を効率化したい。でもどうしていいかわからない。Power Appsを開いたが、何から始めればいいのかわからない。
構造が読めない人は、いつまでも“設定画面と格闘するだけ”で終わる。
そして、開発の現場ではこう言われるようになる。
「君の提案、図がないと意味がわからない」
つまり、読めない人はいつまでも外注の仕様書しか書けない人になる。
まとめ
モデル駆動型アプリは、業務の構造を言葉にできる人が使いこなせる新しいノーコード開発。
ドメイン駆動設計がソフトウェア開発のための“思想”なら、モデル駆動型アプリは現場で動く“実践ツール”。
重要なのは、構築より設計、設計より読解。
読める人だけが、次のアクションを起こせる。
業務を変えたいと願うすべてのあなたに、最初の一歩として“構造を見る目”を届けたい。
それがキャリアの背骨になる力になる。