履歴書を送っても音沙汰がない。どれだけコードを書いても仕事が決まらない。そんな「報われない努力」の正体は、時代の変化そのもの。今、評価されるのは“書ける人”ではなく、“動ける人”。仕事をする力ではなく、仕事をつくる力が問われている。
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採用のルールが変わった──コーディングは最低条件にすぎない
GoogleのKelsey Hightowerは「今、企業が求めているのはコードを書く人ではなく、プロダクトに貢献できる人だ」と語る。コードは重要だが、それだけでは不十分。プロダクト全体に関わる姿勢がなければ選ばれない時代が来た。
開発現場では以下のようなスキルが重視されている。
- ユーザー視点を理解し、改善提案ができる
- ドキュメントや仕様に落とし込める
- テストや運用を含めてプロダクトとして完成させられる
「書ける」だけの人材は、AIによって代替されつつある。採用側はすでにその前提で動いている。
AI時代の仕事は「作ること」より「伝えること」
MicrosoftのSatya Nadellaは、「AIと共存するには、人間ならではの説明力がカギになる」と語る。技術力だけでなく、その技術をなぜ選び、どう使うかを説明できる力が求められる。
例えるなら、料理人がレシピ通りに作るだけでなく、「なぜこの食材を使ったのか」を語れることが価値になるようなもの。ツールは誰でも扱えるが、そこに意味を持たせられるのは人間だけ。
現場で差がつくのは以下の力。
- 「なぜそれを実装するのか」を言語化する力
- コードとUXを結びつける思考力
- 社内外に成果を伝えるアウトプット力
この3つがそろって初めて、採用される確率が高まる。
コーディング以外のスキルが武器になる理由
以下のような非技術スキルが、現在のエンジニア採用で評価される。
- 業務知識(ドメイン知識)
開発対象の業界を理解する力。業務アプリなら業務プロセスを、医療系なら診療の流れを理解しているかどうかが差を生む。 - プロダクト志向
自分の書いたコードがどう使われるか、顧客にどう価値を届けるかを考える視点。単なる作業者ではなく、ビジネスの一部を担える人材が求められる。 - ドキュメント力
コードの説明、設計思想、チームへの共有ができるか。読みやすく書ける人は、採用されやすい。
これらは一朝一夕で身につくものではない。日常の中で意識的に積み重ねる必要がある。
たとえばGitHubは現代の履歴書
ポートフォリオの代わりに自分の考えを形にして残す場所がGitHub。単なるコードの倉庫ではなく、「あなたの頭の中」を見せる場になる。
例として次のような使い方がある。
- プロダクト改善のアイデアをコードにして投稿
- 気になる企業のサービスを模倣・改善しGitHubに公開
- ドキュメント付きで設計思想をまとめる
これは「ネット上に自分の名刺をばらまく」ようなもの。履歴書が読まれないなら、読まれる場所に自分を置くしかない。
「ジュニア採用」は減っているという現実
TechCrunchの統計では、2024年以降ジュニアポジションは35%以上減少した。これは偶然ではない。
背景には次のような要因がある。
- AIツールの普及により、初歩的なコードは自動化されつつある
- チームへの貢献が曖昧な人材はリスクとして扱われる
- 採用側が“即戦力ではなくても価値のある人”を選ぶ基準を厳格化している
ジュニアでも採用される人には、共通点がある。それは「コード以外の強みを見せている」こと。
まとめ
コーディングスキルだけでは、スタートラインにも立てない時代が来た。だが逆に言えば、コード以外の強みを持つことで他人と差をつけるチャンスがあるということ。
履歴書に頼るのではなく、GitHub、SNS、イベント、発信。自分を伝える場は無数にある。プロダクト思考、言語化力、ユーザー視点。それらを少しずつでも持ち合わせることで、あなたの価値は「書ける人」から「選ばれる人」に変わる。
スキルの断片を集めるのではなく、それを価値として結びつける力を手に入れることが、次のキャリアの鍵になる。