仕事が忙しい。教えてもらう時間がない。効率化なんて余裕がない。そんな言い訳を並べながら、毎日「同じ業務を速くこなす」ことに満足していないか。変化を学ばないまま、歳月を積み重ねていくことが、どれだけ自分のキャリアを腐らせるか。問題は環境ではない。「成長しない自分に慣れてしまった」ことにある。
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忙しいふりで現状維持を正当化する構造
業務が山積みであることは、学ばないことの理由にはならない。
むしろ「時間がないから成長できない」は、最も安直な言い訳である。
ハーバード・ビジネス・レビュー(2021年4月号)によれば、多くの従業員は自分の忙しさを「価値ある仕事の証」と錯覚しているが、実際にはその“多忙感”の約30%は自己管理能力の欠如によるものとされている。
つまり、忙しさは“やるべきことが多い”のではなく、“仕事の意味づけができていない”結果であることが多い。
定常業務の罠:変化のない努力は資産にならない
毎日手を動かす。目の前のタスクを潰す。そのこと自体に問題はない。
だが、“変化しないままこなすこと”が常態化すれば、それは「労働の反復」でしかない。
人は、同じことを1,000時間繰り返しても、工夫しなければスキルとしては蓄積されない。
カーネギーメロン大学の研究によると、意図的に改善点を見つけようとしない限り、反復作業は能力を伸ばさないという結果が出ている。
言い換えれば、ただ働いているだけでは、何も成長していない。
ジョブクラフティングをしない人間はキャリアが鈍化する
ジョブクラフティングとは、与えられた仕事を自分なりに設計し直すこと。
役割をただこなすのではなく、意味づけやプロセスの見直しを通じて、自分の成長に接続する技法。
社会心理学者Amy Wrzesniewskiの研究では、ジョブクラフティングを実践する人材は、モチベーション・スキル・昇進率が有意に高いとされる。
だが、現実の職場には以下のような人間が多数存在する:
- 与えられた作業をそのままこなす
- 作業効率は高いが改善提案はゼロ
- 学習機会を“忙しさ”で断る
- 新しい領域に踏み込まない
- 資料作成やツール選定を「得意な人任せ」にする
このタイプは、30代後半から“自分のキャリアを外注”しはじめる。
たとえ話:同じ場所をグルグル回る人は、どこにも進めない
迷路に入ったとき、同じ通路を何度も往復していると出口にはたどり着けない。
地図を描き、全体像を考え、方向を変える必要がある。
日々の定常業務に没頭していると、この“方向を変える”機会を自ら潰すことになる。
忙しさに身を委ねることは、成長機会からの逃避にすぎない。
ベテランこそ“学ばないリスク”を直視すべき理由
キャリアの後半に差し掛かる30代後半以降の人材には、学びの停滞が致命傷になる。
スキルの更新を止めれば、「使える人材」から「過去の人材」へと変わる速度が加速する。
IPAの『IT人材白書2023』によれば、40代で“学習意欲の継続”を示す人は全体の18.6%にとどまっている。
その一方で、スキル転換(リスキリング)へのニーズは企業側から急増しており、「学ばないベテランは組織の足を引っ張る」と判断される傾向が強まっている。
“裁く”のではなく“仕組み化”せよ
単純に手を動かして仕事を片づけるのは、労働者としての初期段階。
一定以上の年次になれば、「その仕事を減らす仕組み」「誰かができるようにする構造」を考えられるかどうかが問われる。
これは単なる能力の問題ではない。
「変化を作る意思があるか」が、そのまま評価につながる。
- Excelのマクロを覚える
- Power Platformでワークフローを作る
- 会議の要点を可視化して時短する
- 属人化した業務をマニュアルにする
これらはすべて“成長を促す自己設計”であり、ジョブクラフティングの具体例にあたる。
まとめ
ベテランになるほど、成長を止めても叱られなくなる。
だからこそ、気づいたときには「変化に置いていかれた人間」になっている危険がある。
日々の定常業務に逃げるな。
学ばないことの代償は、遅れてから気づいても取り返しがつかない。
あなたがもし忙しさの中で思考停止しているなら、それはもう変化のチャンスを潰しているということ。
成長は、与えられるものではなく、自分で拾いにいくもの。
どれだけ手を動かしても、考えなければ進まない。
その現実が見えているかどうかが、キャリアの分かれ道になる。