「エンタープライズって、結局なんのこと?」と聞かれて、はっきり答えられる人は少ない。「企業のこと?」「なんか大きい会社?」「宇宙船?」そんなふうに、どこかつかみどころのない言葉。でも、それには理由がある。
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エンタープライズ=会社、じゃない
「エンタープライズ」は、たしかに会社や事業を指すことが多い。けれど、正確には「何かを成し遂げるために集まった、人やモノや仕組みの集まり」という意味を持つ。
会社に限らず、ボランティア団体も、地域のまちづくりも、YouTubeチャンネルの運営も、泥棒グループでさえ、エンタープライズになり得る。
たとえるなら、エンタープライズは「動く屋台」みたいなもの。屋台には店主がいて、食材があり、調理器具があり、お客さんとのやりとりがある。それらが一つの目的=料理を提供するために動いている。これがエンタープライズの原型。
エンタープライズを動かす「5つのパーツ」
エンタープライズの中には、必ずいくつかの要素が組み合わさっている。
- 人:動かす人、使う人、手伝う人
- 道具やモノ:商品、サービス、ツール
- やり方:ルール、手順、仕組み
- 目的:何のためにやっているか
- 関係:外から関わる人やもの(たとえば取引先、行政、天気)
これらがうまく噛み合って動いている状態こそが、エンタープライズ。
外からは見えない「黒い箱」もある
企業や組織は、自分の中のことは細かく知っているが、外のことまでは全部は見えない。これを「ブラックボックス」と呼ぶ。
たとえば、大手アパレル企業が委託している海外工場。その工場で劣悪な労働環境が放置され、事故が起きたとしても、本社からは何が起きているのかわからない。これは黒い箱に任せすぎた結果。
逆に、全部を中までチェックするのも非現実的。たとえば、パン屋が小麦粉の農場まで毎回検査に行くのは無理がある。だからこそ、信頼やバランスが大事になる。
泥棒もエンタープライズ?びっくりだけど本当
泥棒だって、スキルがある。仲間がいる。道具を使う。Googleマップで道順を確認する。ターゲットを探す。これらがうまく連携して、目的(盗む)を達成する組織になっている。
つまり、エンタープライズとは「いいことをする組織」ではない。構造と目的をもった動くしくみであれば、善悪を問わずすべて含まれる。
エンタープライズは「変化する動物」
組織は、生き物みたいに毎日変わる。
- 新しい人が入る
- 技術が変わる
- 家族の事情で予定が変わる
- 雨で納品が遅れる
ある日、社長が子どもを野球に送るために会議に出られなかったとする。その瞬間、その子どもが企業活動に影響する「外部の要素」になる。
だからエンタープライズは、いつも決まった形ではなく、その日そのときの構成で動いている。
ベニオフが語る「企業の本当の役目」
SalesforceのCEOマーク・ベニオフは言った。
「企業の目的は、利益だけじゃなく、社会に貢献することだ」。
利益を出すだけでなく、環境問題、格差、教育など、社会の課題に対して動けるしくみこそが、今の時代に求められるエンタープライズ。
つまり、「誰かの役に立つこと」を目的に、人とモノと技術が動く。その状態が、本来の姿。
まとめ
エンタープライズは、「会社=法人」ではなく、「動くしくみのチーム」のこと。そこに人がいて、目的があって、道具があって、日々変わる関係がある。
たとえるなら、エンタープライズは「動く迷路」だ。昨日と今日でルートも登場人物も変わる。でも、ゴールは決まっている。
そう考えると、エンタープライズは、あなたが関わるあらゆる仕事や活動の中にも存在している。
そのしくみがわかれば、チームの動かし方や、仕事の意味が、少しだけクリアになる。