「何のコンサルタントになればいいのか?」と聞かれて即答できる人は少ない。ITかDXか戦略か。どれも言葉は聞いたことがあるが、違いがあいまいなままキャリア選択が進んでいるのが実情だ。コンサルタントの世界は広く、細かく分かれ、進化し続けている。まずITコンサルタントとは何か? そこから出発して、DXコンサルタントやさらに細分化された専門職の全体像を明らかにしていく。
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ITコンサルタントの基本的な役割
ITコンサルタントは、企業のITに関する課題を発見し、テクノロジーを使って解決に導く専門家。システム導入から運用改善、クラウド移行まで守備範囲は広い。
- 現状のIT環境を調査・分析する
- 業務に合ったシステムの導入や改修を提案する
- IT投資の費用対効果を試算する
- 社内業務の自動化・効率化を支援する
たとえば「営業チームのExcel業務が煩雑すぎる」という悩みに対して、SFAツールの選定から設計・導入・教育までを一貫してサポートする。ITの通訳者であり、翻訳者であり、整備士でもある。
DXコンサルタントとは何が違うのか?
ITコンサルタントが「既存業務の最適化」を中心にするのに対し、DX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルタントは、企業そのものを“変える”ことを目的とする。
DXは単なるデジタル化ではない。
- 組織文化の見直し
- 事業モデルの再設計
- 顧客接点の再定義
- データ活用による意思決定改革
たとえば「製造業の部品会社がIoTデータで予防保全型ビジネスに変わる」ような、事業の“脱皮”を支援する職種がDXコンサルタントである。
経済産業省も「2025年の崖」レポートで指摘したとおり、古いシステムや組織構造のままでは企業は競争力を失う。この危機を乗り越えるための案内役、それがDXコンサルタントという存在である。
IT/DXコンサルの専門職への分化
DXの進展とともに、コンサルティング業界も細分化が進んでいる。以下はその代表例である。
呼称 | 主な領域 |
---|---|
クラウドコンサルタント | AWSやAzureなどの設計・移行支援 |
データコンサルタント | BI/DWHの導入、データガバナンス設計 |
AIコンサルタント | AI導入支援、業務への自然言語処理適用 |
サイバーセキュリティコンサル | 情報漏洩対策、ゼロトラスト設計 |
UXコンサルタント | 顧客接点の改善、UI/UXの最適化 |
IT戦略コンサルタント | 中長期的なITロードマップの策定 |
業務コンサルタント(BPR) | 業務改革、RPAなどの導入支援 |
すべてに共通するのは「ITの知識」と「ビジネスの理解」を両方持つこと。
ITに偏れば“ベンダー”になる。ビジネスに偏れば“評論家”になる。両者の橋渡しができてこそ、コンサルタントの本領が発揮される。
何のコンサルタントを目指すべきか?
「自分は何のコンサルタントに向いているのか?」を考えるとき、以下の3つの軸で整理すると見えてくる。
1. 技術志向か、ビジネス志向か
- 技術の実装に興味がある → クラウド、セキュリティ、AIコンサル
- 経営や業務の変革に関わりたい → IT戦略、DX、業務コンサル
2. 深く掘るか、広く見るか
- 特定領域に特化したい → データコンサル、UXコンサル
- 全体像をつかみたい → DXコンサル、IT戦略コンサル
3. クライアントの誰と話したいか
- システム部門と議論したい → IT・クラウド・セキュリティ系
- 経営層と議論したい → DX・IT戦略系
たとえば、「PythonやAWSの知識が好きで、手も動かしたい」ならクラウドコンサルが合う。
「経営に関心があって、PowerPointで全体像を描くのが得意」ならDXコンサルが向く。
未来のコンサル像:融合と越境
近年では、IT × 戦略 × デザイン × データが一体となったコンサルティングが主流になりつつある。
アクセンチュアがデザイン会社Fjordを買収した例のように、コンサルは「経営の話だけする人」から、「組織ごとデザインする人」へと変貌している。
一方でGoogle Cloudの公式ブログでは「顧客企業にとってクラウド導入は“旅”であり、その旅を支援する人材が必要」と述べている。つまり、もはやシステム導入だけでは足りず、カルチャーと人の行動変容まで見据える力が求められている。
まとめ
ITコンサルタントは、企業の“仕組み”を支える職人。DXコンサルタントは、企業の“変身”を支える演出家。
両者は同じ地図を持っていても、見る角度が違うだけ。進化の過程でさらに専門職に分かれつつあるが、共通するのは技術とビジネスの両方をつなぐ力。
何をコンサルしたいのかではなく、誰の課題を、どんな方法で解きたいのか。
そこから逆算すれば、目指すべきコンサルタント像は必ず見えてくる。選ぶべきは“肩書き”ではなく、問題解決のスタイルそのものである。