BPO 働き方

【気づけば10年】BPOで働くあなたが“スキルゼロのまま”年を重ねる理由とは

仕事をしているつもりなのに、いつまで経っても何も変わらない。気がついたら5年、10年が過ぎていた。昇進もしないし、転職もできない。まるで時間だけが削られていく。そんな違和感を、あなたも感じているかもしれない。

BPOという働き方がスキルを奪う理由

BPOはビジネス・プロセス・アウトソーシングの略。企業が自社の業務を外部に委託することを指す。経理や人事、コールセンターなど定型的な業務が主な対象になっている。業務の効率化やコスト削減を目的に導入され、BPO市場は世界中で拡大している。

業務が細かくマニュアル化され、誰がやっても同じ成果が出るように設計される。あなたの判断力や提案力は使われない。考える機会がない。作業を繰り返すだけの毎日が、スキルの芽をつぶしていく。同じ場所をぐるぐる回るだけで、どこにも進んでいない感覚になる。

BPO企業の現場では業務内容が細分化され、オペレーター、リーダー、SVといったルートはあるが、役割ごとの違いは薄い。指示されたことを守ることが評価され、改善や提案は求められない。自分の頭を使うことが減れば、成長は止まる

オペレーションは“消える仕事”とされている

米国の起業家マーク・アンドリーセンは、2011年に「ソフトウェアが世界を食いつくす(Software is eating the world)」と発言した。単純作業や定型処理はテクノロジーによって自動化され、そこに人間は不要になると予言した。

コールセンターやデータ入力、決まったフローに沿って行う業務は、すでにAIチャットボットやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で代替が始まっている。BPO業務は最もAIに置き換えられやすい分野として知られている。グーグルやアマゾンは、BPO活用を進めながらも同時に業務自動化の技術を大量導入している。

簡単に言えば、「今やっているその仕事、いずれ機械がやる」ということになる。

たとえるなら、穴の開いたバケツで水を運ぶような働き方

BPOで働くことは、毎日きちんと仕事をしているように見えて、実は大事なものが漏れていく構造に似ている。スキル、経験、キャリア、すべてが目に見えない穴から流れ落ちる。気づいたときには、何も残っていないかもしれない。

穴の開いたバケツをいくら往復しても、水はたまらない。あなたの努力が積み上がらない理由は、あなたのせいではなく、仕組みにある。

格差を拡大するBPOの構造

BPOはコスト削減のために導入される。だから正社員で担っていた業務を、非正規や外注先に移すのが基本方針になる。そこで働く人は給与が抑えられ、待遇も限定的になる。同じ仕事をしていても、属する組織によって待遇が違う格差が生まれる

正社員は「任される仕事」、BPO社員は「指示される仕事」。この違いが大きなキャリア差を生む。企業は「戦略を考える人材」は社内に、「実行する人材」は外部に置く。責任と報酬があるのは社内側で、BPO側には責任も裁量もない。使い捨てが前提の構造になっている。

BPOの現場は流動性が高く、スキルが横展開しにくい。同じような業務に閉じ込められ、キャリアの選択肢が限られる。転職しようとしても「やってきたことが通用しない」と感じるケースが多い。

テック企業の本音:ルーティンは外注し、創造は自社で守る

Amazonの元CEOジェフ・ベゾスは、社内メモでこう書いたとされる。「反復可能な業務はすべて自動化または外注せよ。人間は創造的思考のために使うべきだ」。この考え方はビッグテック全体に浸透している。

つまり、BPOで委託される仕事は、創造性が求められない仕事という前提で選ばれている。創造的でない=代替可能という意味でもある。

裏を返せば、委託される側の人間には、個性や判断力は期待されていない。言われたとおりに動くことが求められ、それ以上でも以下でもない。

まとめ

BPOは効率的で便利な仕組みとして企業からは歓迎されている。だが、その便利さの裏で、人は役割に閉じ込められ、スキルや経験の幅を広げる機会を失っている。

考えない働き方に慣れるほど、抜け出すのは難しくなる。毎日ちゃんと働いているつもりでも、成長が止まり、未来が曇る感覚が残る。

ただ、そこに気づけたなら、今から選択肢を考え直すこともできる。目の前の仕事があなたの可能性を閉じているのか、それとも開いているのか。その違いを見極める目こそが、次の一歩につながる。