パンデミック以降、働き方は明確に変化している。
会社員という形態にこだわらない新しい働き方のモデルとして注目されるのが、DAO(分散型自律組織)、GIGエコノミー、ノマドワーク、フリーランスというキーワード。
これらは単なるトレンドではなく、経済構造そのものの変化に対応した雇用の変形であると各所で報告されている。
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DAO(分散型自律組織)とは何か
DAO(Decentralized Autonomous Organization)は、ブロックチェーン上に構築された組織体で、中央の管理者を持たずにスマートコントラクトによって運営される仕組み。
- 組織はトークン保有者によって意思決定される
- 貢献度に応じてインセンティブが分配される
- プログラムにより業務が自動化されている
出典:Harvard Business Review “What Is a DAO?” (2022)
DAOの特徴は、働く側が「雇用される」のではなく「貢献する」という構造にある。
メンバーは必ずしもフルタイムである必要はなく、業務単位・提案単位で報酬を得る形が多い。
暗号資産による報酬も一般的。
GIGエコノミー:仕事が“仕事”でなくなる経済圏
GIGエコノミーは、単発的・契約的な働き方が集積する経済構造を指す。
McKinseyの調査(2023)によれば、アメリカではすでに全労働者の36%がGIGワーカーであり、日本国内でもフードデリバリー、ライドシェア、クラウドソーシングなどの市場が急拡大している。
特徴:
- 雇用契約に縛られず、成果物単位で報酬を得る
- 時間・場所に柔軟性がある
- 安定性に欠ける一方、複業・兼業が容易
出典:OECD “Policy Responses on the Future of Work” (2023)
ノマドワーク:移動を前提としたライフスタイル型労働
ノマドとは、物理的なオフィスを持たずに働く形態。
テレワークの進化により、「仕事は場所を選ばない」が現実になった。
2019年、Buffer社が発表した「State of Remote Work」によると、
ノマドワーカーの**最大のメリットは“自由な働き方ができること”であり、デメリットは「孤独」**とされた。
ノマドワークには以下の条件が求められる:
- PC一台で完結する業務スキル
- 通信環境とデジタルツールの活用力
- 自己管理と計画性
場所や時間にしばられない一方、成果物への責任と継続的な学習が前提となる。
フリーランス:業務委託型の自己責任ワーク
フリーランスは、法人にも個人にも雇用されない労働者。
クライアントと直接契約し、業務を請け負う形で報酬を得る。
総務省の「労働力調査」(2023年)では、日本国内のフリーランス人口は増加傾向にあり、特にIT・クリエイティブ領域の割合が高い。
特徴:
- 自己都合で仕事量・収入を調整できる
- 法人化やチーム化も可能
- 保険・年金などの社会保障は自己管理
フリーランスは自由な働き方と引き換えに、セルフマネジメントの力が極めて重要になる職種とされる。
共通点:組織に“所属しない”ことを前提とした構造
DAO、GIG、ノマド、フリーランスに共通するのは、雇用主を中心とした労働契約に依存しない働き方。
- 時間・場所・報酬構造が柔軟に変えられる
- 自分のスキルを軸に、複数の案件や関係性を維持する
- 個人の信用や成果が、そのまま次の仕事の資産となる
World Economic Forumが示す「The Future of Jobs Report 2023」では、
今後10年で重要となるスキルの上位に「自律性」「柔軟性」「デジタルスキル」が並ぶ。
これらは分散型の働き方を前提にした人材像に近い。
組織の変化に合わせて、働き方も分散型に変わっていく
これまでの「一社に勤め続ける」モデルでは、
組織の変化や経済の不確実性に対応することが難しい。
分散型の働き方は、変化する社会に対応する柔軟な戦略として提示されている。
それは新しい概念ではなく、すでに欧米の働き方の標準に近づいている。
今の仕事を続けながら、これらの構造を理解し、自分の時間を守る設計に組み込んでいくことが、働き方の“シフト”につながる。